「難しい」にサヨナラ!慶應法学部「論述力(小論文)」の対策と参考書

「難しい」にサヨナラ!慶應法学部「論述力(小論文)」の対策と参考書

こんにちは!慶應義塾大学法学部3年です。慶應の入試といえば何といっても「論述力(小論文)」が特徴的です。多くの受験生はこの科目に対して漠然な不安を抱えながら勉強していることでしょう。今回は、特に法学部で出題される「論述力」の基本的情報と勉強の指針について説明します。

慶應義塾大学法学部に在籍している3年生です。

受験生の中には、「論述力(=小論文)」があるからという理由で慶應を敬遠する人もいるのではないでしょうか。実際に「やたら難易度高そうだし、勉強法もわからない!」と悩む学生は少なくありません。

しかし、実のところ慶應法学部の小論文はそこまで「ハイレベルなもの」を求めるわけではありません。
2014年度入学の筆者が、自分の体験談や過去問解答例を交えながら、そのことについてお伝えしたいと思います。

慶應義塾大学法学部「論述力」の特徴とは?

「論述力」は、まず課題文を読み、文章の要旨・主張を理解した上で、設問に答える形式になります(年度によりますが、『あなたの考えを論じなさい』という問題が多く見られます)。字数は1000字以内で、本番では20×20マスの原稿用紙が答案用紙として与えられます。

慶應義塾大学は、他学部でも論述力(小論文)試験を行っていますが、答案に求めるものは学部によってさまざまです。例えば、SFCの小論文は「学生のアイデアを見る」設問を設定していますが、一方、法学部のものは「法律・政治・社会に関する課題文を論理的に理解し、論理的に意見する」ことを求める設問が多いといえます。

例えば、2014年度の『論述力(小論文)』では、このような問題が出ました。


【問題】
次の文章は、「倫理規範における主題としての『家族』」と題する論文の中で、フェミニズムにおけるケアと正義の二元論についての記述の抜粋である。この文章を読み、「ケアの倫理」と「正義の倫理」についての筆者の分析を踏まえて、貴方の考えを論じなさい。(1000字)

出典:www.toshin-kakomon.com

「一体何を言っているんだ」と思いたくなるような問題文です。
一見すると、とてつもなく難しく、しかも書きづらいような問題に思えるかもしれません。
しかし、実際には、慶應法学部の小論文にはある程度点数を押さえられる対策が存在します。

特徴に基づいて行うべき対策

上記を踏まえると、やや難しそうに見えますが、実はあまり悩む必要がありません。
詳しくは下段で述べますが、慶應法学部で出題されるような、『文章の要旨をまとめる+自分の考え(or賛成・反対)』または『文章内の内容の具体例などを提示する+自分の考え(or賛成・反対)』を書く問題で必要な能力は、たった3つしかありません。

それは、
①読解力:設問で指定されたように、課題文の要旨を抜き出す能力
②構成力:小論文の基本的な書き方を理解し、文章を組み立てる能力
③意見力:小論文のキモである、「自分の考え」を論理的に表現する能力

この3つを押さえてしまえば、よほど変わり種の問題が出てこない限りは問題ありません。
上段の2014年度過去問も、問題文だけ見ればかなりヤバそうな匂いがしますが、課題文をしっかりと読み込めば(つまり読解力を鍛えておけば)、『筆者が分析している箇所』がいくつか読み取れるので、そこから紐解いて、論述につなげることができます。
"変わり種"については、2010年の『これから古代ギリシャの戦争史の話をします…[中略]…もし貴方がラケダイモーンの市民だったら、どうすればよかったと思う?』という、"If"の話をする過去問があります。ですが、こういった変わり種は、基本的には受験者全員が戸惑うようなもので差が付きにくいので、そこまで不安になることでもありません。読解勝負+そこからのアドリブ意見力で頑張りましょう。

では、これから①読解力 ②構成力 ③意見力、のそれぞれを見ていき、小論文の基本を押さえておきましょう。

読解力:内容を要約しよう

これについては、結局のところ、現代文(論説文)の演習を多くこなすのがオススメです(『現代文と格闘する』『入試現代文へのアクセス』など)。特に、意識的に「要旨をまとめる」作業ができる記述問題に慣れておくと良いでしょう。早稲田大や上位国公立など、慶應と併願する可能性の高い大学の過去問を演習することで鍛えられると思うので、一石二鳥でしょう。また、新聞の社説やコラムを、「つまり何が言いたいのか」ということに焦点を当てて要約するのもおすすめです。

構成力:小論文の書き方を学ぼう

先ほど、「構成力」と大げさに言ってしまいましたが、小論文の基本的な書き方を学べば構成力は身に付きます。

書き方としては、

[Ⅰ] 課題文献の要旨をまとめる。
(例:『課題文によれば…ということであった。』)
[Ⅱ] 要旨についての自分の考えを提示する。
(例:『私はこの点について、~だと思う/~という問題があると考える』『~に賛成だ/反対だ』)
[Ⅲ] Ⅱの理由や具体例を提示する
(例:なぜなら~だからだ。/具体的な例としては~)
[Ⅳ] Ⅱをもう一度結論として提示する
(例:それゆえに私は~だと考える。)

というものが、『文献を要約し、文について論じなさい』というタイプの小論問題(→慶應法学部の小論文)のフォーマットの1つになります。このフォーマットをベースに、小論文の書き方に関する参考書も参照しながら、学校や予備校の先生に添削してもらうのが良いでしょう。小論文は、多くの問題をこなすよりも、一つの問題を完璧に仕上げることを目指してください。慶應法学部の過去問なら、上段でも述べた2014年の「ケア/正義の倫理」の問題や、2005年の「共通善」の論述問題がオススメです。「ケア/正義の倫理」「共通善」をキーワードに、憲法・安全保障政策・社会問題・外交問題などと絡められるように練習しておきましょう。

一例ですが、2014年の問題で当時受験生だった筆者が作った解答をベースに、答案例を作ってみました。
字数は952/1000です。一般的に、字数指定がない場合でも要約は400字前後に納め、全体で900字は超えるようにしたいです。

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[Ⅰ](→問題文/筆者の意見の要約など)
筆者によれば、『正義の倫理』とは、自らの権利を主張し、他者の権利を自らのものと競合するものと捉えて"権力の調整"をしようとする倫理のことを指す。一方で、『ケアの倫理』とは、他者への共感・自己批判といった、より弱いものへの視線から発せられる共感倫理を指している。近代社会においては、『ケアの倫理』が、『外の社会』で日夜争う男性をケアするという文脈での『女性』像を中心とした『家庭』という私的領域に封じ込められ、一方で『正義の倫理』は権利獲得の闘争に没頭する『男性』像を中心とした『政治』という公的領域にあてがわれた。ここでは『ケア』と『正義』は分離され、近代社会における『男性』と『女性』という象徴のもとで、二項対立する存在として扱われたのであった。しかし、本来政治には『ケアの倫理』が不可欠なものである。なぜならば、政治とは、見知らぬ他者のニーズを代弁し、はっきりと表明する機会を持たない者たちのニーズに応えようとするするものであり、そのような他者への『ケア』が政治に求められる想像力・判断力を養う素地になるからである。

[Ⅱ](自分の意見の提示)
私は、この筆者の分析を踏まえて、現代日本の外交・政治・歴史問題の衝突にも『ケアの倫理』不足があるように認識している。

[Ⅲ](理由・具体例の提示)
例えば、日中間におけるこれまでの歴史認識問題は『正義の倫理』のみで運営されていたからこそ発生したと考えている。日中関係が改善しない原因には「戦争」という要素が存在する。この『戦争』は、『正義の倫理』の観点からすると、『国家が利益・権力をめぐって争う行為』だと認識されるが、一方で、これまで無視されてきた『ケアの倫理』では、『国民の痛み・傷・苦しみをもたらすもの』であった。現在の悪化した関係を分析するならば、日本が中国に対して、『戦争』がもたらす人々への痛みや苦痛への配慮、といった『ケアの倫理』を認識せずに外交問題を処理しようとしている点、そして、戦後レジームの脱却という思考のもと、日本の再軍備化を推進する安保法制を各種整備しようとする『正義の倫理』的行為に、関係悪化の原因がある。勿論、『正義の倫理』的行為そのものが悪なのではない。しかし、『ケアの倫理』が欠如した政治には、国際関係の火種がくすぶりやすいと私は考える。

[Ⅳ](意見の再提示)
それゆえに、筆者が課題文で述べた指摘は、現代の日本にも適用できる視点だと考える。
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答案例は以上です。今思うと、なかなかリベラルな答案でした。
採点には、教授の「好き嫌い」程度のものは関係してくるとは思いますが、基本的に思想の問題でどうこう、ということはありません。思想の右/左の如何にかかわらず、内容としては、高校生でこのレベルまで書くことができれば小論文は大丈夫だと思われます。

意見力:政治・社会に関心を持っておく

立憲主義・基本的人権・日本国憲法などについて基礎知識を持っていると、課題文と絡めて意見しやすいのでオススメです。また、近頃話題になっている安全保障や、格差・環境問題などの社会問題も意見を作る際に引用しやすいものだと思います。普段から新聞記事・社説を読むなどして、知識を整理しながら多様な問題について自分なりの意見を持っておくことが重要です。

以下に、思想/スタンスに偏らず、いくつか新書を紹介しておくので、書店などで手にとってみてください。

見込める得点と+αの学習

そもそも、慶應法学部の入試システムでは、そもそも英語と地歴の得点が、一定の数値を超えなければ「論述力」は採点してもらえない(=足切り)システムになっています(2015年度については、慶應義塾大学が発表する「一般入試 得点状況」に記載されています)。
なので、慶應法学部の論述力で重要なのは、「完璧な答案を書く」というよりかは、「論理的な書き方で、字数を過不足なく埋める」ことです。これさえ出来れば、あとは英語・地歴の出来次第で合格の光が見えるでしょう。

余裕のある人は、『小論文キーワード2500』などで用語のインプットをしても良いと思います。

おわりに

これまで確認してきたように、慶應法学部「論述力」で求められる能力は、そこまで突飛なものではありません。
①「課題文の要旨を理解できること」
②「要旨に関連した意見や賛否を主張できること」
③「その意見・賛否の理由を整理して説明できること」
の三つです。①については、普段の現代文演習を重ねることで養われるでしょう。②と③については、日頃から新聞等で「基本的」な社会・政治・時事問題について広く浅く知り、「自分はどう思うのか」ということについて自問自答する(=意見を作る)ことで鍛えられると思います。
特別なことは必要ありません。少しだけ、普段の受験勉強と日常生活にスパイスを加えてあげるようにして、「自分の頭で考え、意見をつくる」作業をするだけです。もちろん、どちらかと言えば、慶應法学部の入試では「論述力」よりも「英語」「地歴」が重要と言えるかもしれません。しかしながら、「論述力」の勉強で行う、「自分で考える」作業は、大学に入ってから大切になっていくものです。
『難しそうだから』という理由で敬遠する人でも、案外すんなり気に入ってしまうのが「論述力」です。まずは新聞記事や社説を読んで、「自分の意見をつくってみる」ことから始めてはどうでしょうか。

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たかみ

慶應義塾大学法学部に在籍している2年生かつ、底辺高校出身、元学校嫌いの意識低い系。自分の経験を踏まえてモチベーション・自己管理などの記事を発信したいと思います。また、家庭教師・個別指導のアルバイト経験を活かして受験勉強に関する情報も発信できたらと思います。

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