地方国立大学が開設ラッシュ!『地方創生学部』ってどうなの?

地方国立大学が開設ラッシュ!『地方創生学部』ってどうなの?

地方国立大学(いわゆる駅弁大学)では、ここ1~2年で、「地方創生学部」の開設ラッシュが目立っている。地方創生学部、実際のところどうなのだろう?入学すべきなのだろうか?大学時代、地方創生活動に従事し、それに関する学術研究をしていた筆者の経験を踏まえてお伝えしたい。

はじめに

『地方創生』と駅弁大学

宇都宮大学・愛媛大学・徳島大学など、地方国立大―いわゆる『駅弁』と言われる大学では、ここ1~2年で「地方創生」系の学部開設が盛んだ。例えば宇都宮大学では『地域デザイン科学部』が、愛媛大学では『社会共創学部』が設立された。いずれも、「地方活性化に貢献できる人材をつくる」ことを目的に、地元企業や団体と協働して「地域おこし」プロジェクトができるカリキュラムが強みになっている。経営・経済・政治・社会福祉など、幅広い学問を修め、卒業後は、地元企業に就職し、その地域に定着することが期待されている。

まさに「地域による、地域のための学部」で、地元志向の受験生にとっては一つの選択肢になりうるはずだ。ただ、その一方で「実際のところ、入る価値があるのかどうかよく分からない」という人も多いのではないだろうか。

筆者は関東出身、慶應義塾大学の4年生だが、都市部で生まれ育ってきた人間という立場から「地方創生」の有効性について研究をしている。実際に中部地方にどっぷりフィールドワークする夏休みを過ごしてきた。この経験も踏まえつつ、「地方創生学部」が作られるようになった経緯や、地方創生の「リアル」な部分について話すことができたらと思っている。

目次

①なんで「地方創生学部」の開設ラッシュが起こったの?
-「地方創生」が日本のトレンドになっている
-「大学教育改革」の流れが始まっている

②実際のところ、「地方創生学部」ってどうなの?
-「地方創生」系学部の2大特徴
-「実際のところ、どうなの?」おすすめする・しない理由
-「本当に地方創生がやりたいのか」ということを問い直してみよう

③まとめ

なんで「地方創生」系学部の開設ラッシュが起こったの?

「地方創生学部」というのは、言葉の通り「地域活性化を担う人材をつくる学部」だ。
”地方創生”というワード自体は最近叫ばれるようになったが、実は昔から、多くの内閣が”地域おこし”という形で取り組んできた。だから、「何でいまさら?」と思うのも自然なことかもしれない。そんな状況で、2016年度になってから地方創生学部の開設ラッシュが進んだ原因としては、2つが挙げられる。

①「地方創生」が日本のトレンドになっている

「地域おこし」レベルの取り組みは、これまでの政権でも行われてきていた。日本の経済発展が一段落付いた1980年代以来、「地方の力も養うべきだ」という観点から、特産品や産業づくりを行ってきた。

だが、久々の長期政権である第二次安倍内閣(2014年)以降、地方政策は強力なものになった。「地方創生」という名のもと、地方にの人口・雇用・出生率などを改善させるための政策を実施している。いわゆる「ローカル・アベノミクス」だ。

「ローカル・アベノミクス」を簡潔なポイントにまとめて説明するなら、
・日本の人口は減少を続けていて、人材も金もみな東京に集中している。
・その中で、都市と地方の格差はより拡大している。
・ゆえに、地方にお金と人が集まるような仕組みを作り、雇用創出を地方で行って定住者を増やし、出生率を高めるために諸政策を行う。
ということだ。

この流れを見ると、地方国立大学で「地方創生」系の学部が増設されることはある種自然なことだ。

②「大学教育改革」の流れが生まれている

2015年度より、文部科学省が「国公立大改革プラン」の実施を決定した。これは、わかりやすく言えば「地方貢献も地方国立大学の役割であり、そのために学部を統廃合しよう」というものだ。大学が地元の企業・団体と連携することで新しい雇用をつくり、卒業生をその地域に定着させるのが具体的な施策だ。学部卒業生が、「地域コンシェルジュ」や、「街づくりプランナー」といった、地方の課題を解決するコンサルタントに近い職業につくことが想定されている。

また、第二次安倍内閣において「純粋な学問研究所」ではなく「職業訓練の場」としての大学を重視している(参照:平成26年度OECD閣僚理事会・基調講演)ことも背景だ。「実学重視」の流れから、多くの国立大学で、文学部などの人文科学系の学部が再編されている。その再編の流れで、実学的な「地方創生」系学部が出現することは想像に難くない。

実際のところ、「地方創生」系学部ってどうなの?

「地方創生」系学部の二大特徴

新設された地方創生学部の説明を読んでみると、2つの共通点が浮かび上がる。
それは、
①「文理融合」で幅広く学問を修めるカリキュラムである
②「実践型教育」が売りで、地元企業や団体と協働することが求められる
ということだ。

その具体例として、宇都宮大学・地域デザイン科学部と、愛媛大学・社会共創学部の学部メッセージを読んでみよう。

学部教育の柱となるのが「地域対応力」を養成する実践形式の授業です。学部生全員が全学科混成で受講し、「地域と向き合う力」、「実態を調査し分析する力」、「課題を解決へ導く力」を身に付けます。それをベースに、3学科で、それぞれ特色ある専門教育を行います。学部の授業は、すべてアクティブラーニングで実施し、実践力を強化します。学部として、それぞれの専門性と、地域の現場での真の課題解決力を身に付け、地域デザインの実践力を養成する体制を整えられたと考えています。
文系分野から理系分野まで、実践家から理論家まで、持ち味のある魅力的な教員が、お待ちしています。皆さんとともに地域で活動しながら学ぶことを心待ちにしています。

(宇都宮大学 地域デザイン科学部 学部長メッセージ)

出典:rd.utsunomiya-u.ac.jp

愛媛大学は、地域に特化した社会共創学部を設置します。文系理系の幅広い専門領域を統合した、地域創生の核となる文理融合学部であり、地域に生まれ育った人材を地域のリーダーとして地域に帰し、地域を活性化させる学部です。そこでの教育は、各年次において理論と実践の統合による課題解決を目指す実践型教育となります。地域活性化に興味関心のある人、地元地域が大好きだという人、地元地域に住む人々や自然を大切にしたい人は、ぜひとも社会共創学部で学び、共に地域の未来を築きませんか。

(愛媛大学 社会共創学部 学部長メッセージ)

出典:https://www.cri.ehime-u.ac.jp/greeting/

メッセーはいずれも似たような内容で、①文理融合・②実践教育が持ち味であるというポイントが押さえられている。これは宇都宮大学、愛媛大学に限らず、多くの地方創生系学部でも同様だ。

「実際のところ、どうなの?」おすすめする・しない理由

「特徴はわかったけど、ピンとこない。実際こういう学部ってどうなの?」と思う学生は多いはずだ。
この段では、筆者の経験を踏まえながら、その点を解説したいと思う。

結論から言えば、伝統的な学問に打ち込みたい高校生にはおすすめしない学部だ。前述のとおり、①文理融合、②実践教育の2つが持ち味なので、経済学や哲学といった学問を講義室や研究室でしっかりと学びたいという学生には合わない。
その一方で、「大学に入ったらボランティアやサークル、バイトをたくさん頑張りたい!意識高く学生生活を過ごしたい!」というアクティブな高校生にはおすすめだ。基本的に、この部類の学部は「自分の足で動く」ことが前提だ。教室の外に出る授業が多く、地元の中高年・社会人とうまく付き合っていくことが求められる。そのため、多少のバイタリティとコミュニケーション能力が鍛えられる。加えて「地方創生」系の学部は、基本的に「浅く広く」勉強する。学部のカリキュラムを見れば分かるように、「経済学」や「政治学」のような、すでに体系が確立された学問を幅広く勉強するだけなので「教養」は多少つくかもしれないが、学会の重鎮みたいな教授にしごかれ、精度の高い論理的思考が求められるような「学術研究」はやりづらい。学生生活の過ごし方次第では「高校生に少し毛が生えた程度」になってしまうのだ。

ただ、この学部の授業はある種「仕事」のような側面があり、魅力があることは確かだ。報告・連絡・相談(いわゆるホウレンソウ)や、外部への営業、コネづくり、プレゼンテーション、企画のプロデュース、基礎リサーチなど、やるべき作業が膨大にあるぶん「社会人」としてのスキルは身につく。自分が熱意を持って取り組んだ地域おこしプロジェクトが、自治体に採択されたりしたときの「喜び」は大きいし、充実感は間違いなくある。そういう経験をしたい学生にはおすすめだ。

「本当に地方創生がやりたいのか」ということを問い直してみよう

ただ、注意してほしいのが、「地方系のプロジェクトはどこの大学・学部でもできる」という点だ。

「社会のいろいろな人と協働して勉強するのって地方創生学部じゃないとできないのかな」と思う人もいるかもしれないが、結論から言えば「NO」だ。都内の私立大でも、商学部や都市学部、文学部といった領域で、地方との協働プロジェクトを動かしていく授業やゼミナールは少なくない。事実、筆者が在籍している慶應義塾大学の例で言えば、文学部と商学部に「地方創生」に近いプロジェクトを回しているゼミが存在する。地域協働型の活動は、時間・金銭コストもあり、大変なことも多い。「ちょっと興味あるかな」くらいの気持ちなら、他の学部・学科に入学して、近いことをやっている学生団体に入るのがいいかもしれない。

ただし、「地方創生学部」を擁する国立大学は、”地元に根付いている”という強みがある。都市の大学生が「よそもの」としてやってくるわけではないので、しっかり地域活性プロジェクトに参加・貢献することができる。それに、「学生が自分の足で地域の人々と協働する」ということが魅力的なのは間違いない。自分の成長に繋がり、人の輪も広がる。地元志向の子であれば、十分に選択する余地のある学部のはずだ。

一方で、この「地域創生学部」は歴史が浅く、地元あるいは地方創生に関する職業に就くことが前提になっているので、東京など都市圏での就職はやや難しいかもしれない。また、このような学部が台頭する中で、地方国立の文科系学部は再編され、数を減らしてている。地方の学生でみっちり「学問」をやりたいと思っている子にとっては、嬉しいニュースではないだろう。

まとめ

いかがでしたか。
記事の内容を簡潔にまとめると、

・地方創生系学部の開設ラッシュが進んでいるのは、「ローカルアベノミクス」と「国公立大改革プラン」の2大政策が背景にある
・学部の特徴は2つ。「文理融合」と「実践型教育」だ。
・地域プロジェクトは面白いことが多く、社会人的なスキルも多く身につけられる。
・一方で、学業的な面ではあまり強みはない。ボランティアや学生団体など、意識高くアクティブなことをしたい高校生にはおすすめだが、学問をしっかりやりたい高校生にはおすすめしない。
・地域協働プロジェクトをやる学生団体などもあるので、必ずしも学部に拘る必要はない。
・「自分が本当に地方創生をしたいのか」を問い直してみよう。

といったところになります。学部選びの参考になれば幸いです。

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たかみ

慶應義塾大学法学部に在籍している2年生かつ、底辺高校出身、元学校嫌いの意識低い系。自分の経験を踏まえてモチベーション・自己管理などの記事を発信したいと思います。また、家庭教師・個別指導のアルバイト経験を活かして受験勉強に関する情報も発信できたらと思います。

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